A2.
この点については、次のように考えることができます。
1)
フレックスタイム制は企業内の一つの勤務方法であり、本来的には始業・終業時刻を順守した定型的勤務をすべきところを、労基法の定めに従い、労使協定等の手続を整え、就業規則に定めることによって認められるものである。よって、当該制度は業務遂行方法の一形態といえる。
そこで、当該制度適用労働者であっても、誠実勤務義務や職務専念義務があり、フレキシブルタイムに行われる重要な会議等の時刻に遅れてもよい、ということにはならない。
2)
使用者の労務指揮権の行使として、一時的・臨時的に、勤務時刻指定が必要な日には、当該フレックスタイム制度を適用せず、あらかじめ労使協定で定める事由、手続等により通常の勤務を命ずる方法をとる。
3)
あらかじめ対象労働者の同意があればよい。これには、通常の始業時刻勤務を命じ、当該対象労働者が異議を述べずに命令時刻より勤務を始めるという黙示の同意も含まれる。
ここから考察すれば、使用者はフレックスタイム制度適用労働者に対しても、通常の始業時刻からの勤務を命じることは可能であり、もし当人がそれをフレックスタイム制度適用を盾に拒んだ場合においは、業務遂行に支障を生じさせたことに該当し、企業規律・秩序違反として懲戒処分の対象になり得る、と考えられます。
(参照 : 『トップ・ミドルのための採用から退職までの法律知識』十二訂
弁護士 安西 愈 著)
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