★ 選択理論について
選択理論とは
「ヒトは外部からの刺激を受けて反応するのではなく、自ら選択して行動している」
と考える、内的コントロール心理学です。
提唱者グラッサー博士は、著書「グラッサー博士の選択理論」の中で
「みじめな感情も含め、自分たちの行動は全て自ら選んでいる」と説きました。
1. たとえば、AさんとBさんの二人がいます。
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1)AさんがBさんに与えるもの、BさんがAさんに与えるものは全て情報、とします。
双方が相手に与える情報自体で、双方が相手に何かをさせることも、感じさせることもできません。
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2)情報はそれぞれの頭脳の中に入り、この頭脳の中でその情報を処理し、何をするかを各自自身が決める、と選択理論では考えます。
もう少し、わかりやすい話にしてみましょう。
A、Bがそれぞれに伝えた(あるいは聞いた)情報が、2人以外の第3者の良くない話だったとします。
AからCの悪口を聞かされたBが「C君と一緒にいると不幸だ」と憤慨する。
BからDの悪態を聞かされたAが「Dの奴め、本当に頭にくる」と怒りをあらわにする。
また、Eの話が進むにつれBが「こっちの気も知らないで。俺をこんなに怒らせたのはEの仕業だったのか・・・」と目を三角にする。
AもBも伝え聞いた情報に対し憤慨し、自分が文句を言っている状態を、双方ともまさか自分自身が選んでいる、とは考えもしていないでしょう。これは相手(C、D、E)が悪いからであり、別に好き好んで怒っているわけではないのだ、と。
このようにC、D、Eの態度に原因がある、という考えは多くの人に共通する感情だと思います。
しかし、選択理論ではあくまでもその状態を選んでいるのはA、B自身であり、ほかの何者(CでもDでもE)でもない、と捉えます。
2. 選択理論では、ヒトの行動を次の4要素に分け、理論上これらを全行動といいます。
1)行為
2)思考
3)感情
4)生理反応(心臓の鼓動、肺の呼吸、脳の働きに関係のある神経化学物質の変化等)
※上記のうちヒトが直接コントロールできるのは行為と思考だけです。
ヒトの行動は上記の全行動から構成されますが、その行動は自分以外の誰かが選ばせたものではなく、全て自ら選択したものです。
つまり、
「自らとる行動は、全て自己責任のもとに行われている」ということです。
< きほんからわかるモチベーション理論 > 81、82頁から引用。
3. グラッサー博士は、ヒトが落ち込むためには3つの理由がある、といっています。
個人的にはその中の一つが、選択理論をよく表現していると思います。
・私たちが落ち込む理由(3つのうちの1つです)
→ 失敗するかもしれない、と恐れているものから引き離してくれる。
→ 落ち込んだり、病気になったりした方が、新しい人間関係や新しい仕事を探すよりも簡単である。
どうでしょうか? そんなことはない、と反発がありそうですが、選択理論ではそう考えます。
そして、自分がコントロールできるのは自分の行動でしかなく、相手が選択する行動を自分はコントールできない。この視点に立って、他人との関係を構築していくことになります。
ですから、グラッサー博士がしばしば述べられている「外的コントロールを主とするこれまでの心理学とは一線を画す」理論といえます。
※外的コントロール心理学
〜悪いことをしている人間は罰せよ。そうすれば、彼らは私たちが正しいということをするだろう。
そして報酬を与えよ。そうすれば彼らは私たちが望むことをしてくれるであろう。
< グラッサー博士の選択理論 > 23頁
労使関係でいえば、特にセクシュアル、パワー、モラルといったハラスメントを予防する上で、知っておきたい理論ではないでしょうか。
〜 ハラスメントを実行しているのはあなた自身であり、それはあなたが選択しているからこそ表出した。決して相手が挑発したからでも誘惑したからでもないのです。
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