モティベーション理論を生かしたマネジメント


1.選択理論

変えられるものにエネルギーを集中させる。


 選択理論からみた行動(全行動)において、不可分とされる要素は次の4つです。

1) 行為 2)思考 3)感情 4)生理反応

このうち、ヒトが変化させられるものは行為と思考だけ、です。


仕事というキーワードからみてみると。

行為・思考は

「計算する」「営業に行く」「接客する」「依頼された見積もりを出す」など。


変化させられない感情・生理反応は

「好きになるとか嫌いになる」「イライラする」「うまくいくかどうか心配する」「ウチの商品が悪いから売れない」など。


確かに、「では、今日からAさんを好きになってくださいね」と言われても、「はい、わかりました。私、Aさんのことが好きです」とはなりませんよね。


また、入学試験、入社試験、資格試験を受験し、「どうかな、受かってるかな。どうなのかな」といくら心配したところで結果を左右することはもはやできません。

 選択理論から導くならば…

変化させられないものに貴重な時間を割くのではなく、変化させられるものを変えることで事態を好転させるべき、となります。


 行為・思考といった「変化させることができる」ものを変化させるべく部下に指示を与える。

「俺、B社のCさんが嫌いなんですよねぇ」。こう言ってはばからない部下に対し

「そんなことを言うもんじゃない。お前の感情なんて二の次だ。好きになるように努力しろ」

こんなアドバイスは何も生まない、ということです。


成果を上げる人の場合、B社のCさんが苦手だ、というならば

「Cさんの嫌な面を見ないようにするには、どんな接し方をすればいいのか?」

「B社に頼らなくても売り上げ目標が達成できるように他社はもとより、いかにして新規に顧客を開拓すべきか?」

と考えるようです。だとすれば、上司は部下に対し「変化させられる」要素を部下自身に気付かせるようアドバイスしてみる。


 変えられないものにエネルギーを注ぎ疲弊するよりも、変えられるものにエネルギーを集中する。その結果、変化させられないとされる感情・生理反応にも変化が現れることもあり得る。そうなれば、当該部下は第一線のみならず、自身が上司として部下の能力を高めてくれる存在になるでしょう。